アルケミラの小部屋

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イセスの修学旅行日記 4日目

 6月27日(土曜日)   天候:快晴


 修学旅行四日目。楽しかった修学旅行もこれで最終日。名残惜しいなあ。
でも、終わらない旅行はないんだし、帰ったらファイナルクエストが待ってる
んだもん。最後の修学旅行になる今日を思いっきり楽しんで、ファイナルクエ
ストに挑まなきゃ、学園で残ってレベル上げをしてくれてるみんな、作戦を考え
てくれてるみんなに失礼だよね。うん、精一杯楽しむぞっ!


 激闘の枕投げから一夜明けた僕たちは、最終日に高知へバスで移動。初日
が徳島県と香川県、2日目がまるごと香川県。3日目に愛媛県。4日目に高知
県、これで四国四県をめぐったことになるんだね。あっという間だったなあ。今
日向かうのは日本最後の清流、四万十川。高知県から生活文化遺産として指
定も受けてるんだって。到着して目の前に広がってた清流は、晴れ渡る空と白
い雲を映す、鏡の様に澄み渡った透明な色。うわぁ……ホントに清流、って言う
字にピッタリの川なんだなぁ………みんな、目の前に広がる景色にしばらく言葉
を失ってたっけ。


 素晴らしい景観に魅入る事しばし、遊びたい盛りの僕たちは早速、この後に待ち
かまえる予定にドキドキソワソワ。トロッコ遊び、カヌー遊びに行く人とは一度ここ
でお別れ。僕は汐音さんと合流して、鮎釣りへ。川釣りは初めてじゃないけど、鮎
は友釣り、っていう囮の鮎を使って、他の鮎を釣る釣り方をするみたい。しかも、岸
辺で糸を垂れる釣り方以外にも、川の中に入って釣る釣り方もあるみたい。これは
初めて見る釣り方だなぁ……汐音さんは川釣り自体初めてなんだって。「それほど
難しくないよ」、と言いたいんだけど、友釣りは初めてなんだよね。とりあえず、やっ
てみなければ判らないから、まずは二人で岸辺からチャレンジすることにした。


 二人で並んで、澄み渡る清流にオトリ鮎をつけた糸を垂れること5分。当初の心配
を他所に、鮎は面白いように二人の竿に掛ってく。うわぁ、友釣り、ってこんなに釣れ
るんだ……びっくりするくらい釣れるから、汐音さんと二人でついつい、言葉を交わす
のも忘れて熱中しちゃった。ときどき交わす言葉は、「イセス、今何匹だ」「5匹、汐音
さんは?」「同じだな。すぐ引き離してやる」。気がつけば、二人でデッドヒートを繰り
広げてたなぁ……ふふ。


 岸釣りも順調なので、キリのいいところ……お互いに鮎の数が同じになったところ
で、川の中に入って釣る渓流釣りに似た釣り方をしてみることに。滅多に出来ない
経験だもんね。鮎も十分釣れたことだし、チャレンジチャレンジ♪ 川に入る為の道
具は一式、貸し出してくれてたから、それを借りていざ川の中へ。澄み切った清流
に身を浸すと、思ったよりも強い川の流れが緩やかに体に感じられる。こうしてると
自然って雄大だなぁ、って、実感する。


 川の浅瀬まで来たら、鮎釣りを再会。川の中で釣る時には、流れの中でふんばり
ながら竿を流さないといけないから、思ったよりも難しい。さらに釣り上げる時に竿を
手元に返して、鮎を外さなきゃいけない。座って出来る岸釣りとは違って、全て立っ
たままの作業になるから、釣るよりも釣った後のリカバリーの難易度がさらに上昇
してる。これは……思った以上かも。でも、面白い! 釣りにもこんな楽しみ方があ
ったんだなぁ。ちょっと渓流釣りも勉強してみようかな? 川釣りの結果は汐音さん
が4匹、僕が3匹。残念、1匹差で負けちゃった。でも、すっごく楽しかったね、汐音
さん! また、機会があったら渓流釣り、一緒に行こうね♪


 鮎釣りが終わったら、今度はお楽しみの昼食タイム。釣ったばかりの鮎をその場
で塩焼きにして食べたんだけど、これも絶品! 淡く塩のかかった湯気の立つ白身
は、淡白だけど、ほのかな甘味があって、塩味がそれをさらに引き立てて、二つの
味を互いに高めて……ああ、思い出すとおなかが減るなぁ。ただ焼いただけなのに
こんなに美味しいんだもん。お土産にした鮎は、天ぷらにしてみよっと。汐音さんも
隣で舌鼓。うーん、最高の最終日♪ ……そう言えば、全然関係ないんだけど、串
打ちをした鮎を食べる汐音さんを見て、汐音さん、片手で食べられる食べ物が似合
う人だな、って思った。ハンバーガーやホットドック、サンドイッチ、それに串焼き、も
ちろん焼き芋も。アウトドアなイメージがあるから、食べやすい食事が似合うように
感じるのかな? でも、小口で食べる姿はすごく上品なんだよね。


 塩焼きを食べたところで一息ついていると、去年のクラスメイトだった月島・生樹さ
んの姿が見えたので、月島さんのところへ。月島さんが運命予報士だ、って知った
のは、今年に入ってからだったんだよね。同じ教室に居ても、隣の席の子が能力者
や運命予報士だって判らないのは、何だか不思議な気分。だからこそ、出会えた時
に運命の糸を強く意識するのかな? 月島さんに挨拶をして……そして紹介するの
は、僕の彼女の汐音さんのこと。去年一緒だった、エルロードさんや遊馬崎さん、水
走さんや燈雫さんに散々からかわれたっけ。汐音さんも、凛々花さんや涼介、望美
さんにからかわれて大変だった、って言ってたな。すごく照れてたそうなんだよね。
月島さんに汐音さんのことを紹介すれば、汐音さんはいつもと同じ顔で挨拶。嗚呼、
そっか。もう、照れないんだね、汐音さん。恋人なのが、当たり前のことだから。胸が
いっぱいになって、ぎゅっと手を握る。月島さんの言葉に、汐音さんが赤くなって、そ
っぽを向く。胸を満たす、気持ちの熱さに、もう一度、ぎゅっと強く手を握った。


 四万十川でのスケジュールも終わり、名残を清流に残しつつ、バスは一路高知空
港へ。流石に、この四日、遊びに遊びきった皆は、疲れて寝てる人が多かったな。
僕は、昨日ぐっすり寝たおかげか、全然眠くなかった。隣で、船をこぐ汐音さん。肩に
かかる小さな重み。起こさないようにそっと肩を抱けば、僕よりも小さくて華奢な肩が
手に感じられる。すっ、と切り替わりそうになる気持ちを、今だけは押さえつけた。た
しかに、明後日はファイナルクエストかもしれない。僕たちが遊ぶ時間は終わりかも
しれない。でも、空港について、飛行機に乗って、家に帰るその瞬間までは、僕たち
の青春を謳歌しよう。学生としての僕たちの日常を、楽しもう。だって、「家に帰るま
でが修学旅行」なんだもの!


 空港で飛行機を待つ間の時間、汐音さんと鳴門の渦潮の話と四万十川での話を
した。同好会の皆と、讃岐うどんの話と道後温泉の話をした。旧F組のみんなと、し
まなみ海道の話をして、騎士団のみんなに、今治の話題をメールした。どれも、これ
も、たった四日の出来事なのに、何日も遊んでいたかのような、楽しさのぎゅっとつ
まったイベントだった。去年の九月にこっちへ転校してきて、友達なんか、出来ない
って思ってたのに。僕は……こんなにもたくさんの友人と、こんなにも素敵な思い出
が作れたんだ。

 美奈子さん、ありがとう。僕を、こっちへ呼んでくれて。みんなと出会わせてくれて。
 父さん、母さん、僕は、今、こんなにも幸せです。僕が送る手紙は、父さんと母さん
の棺に、届いていますか? 二人のくれた命が、こんなにも幸せなことが、届いてい
ますか? 



 修学旅行に一緒に行ったみんな。本当にありがとう。
 僕の人生の中で、最高に楽しい旅行の思い出が、出来ました。




 

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イセスの修学旅行日記 3日目 その4

 しまなみ海道での名残惜しい別れも束の間。今度は涼介、沙希さんと
一足先に今夜泊まる、道後温泉へ。ここでは同好会の益島・紬さんと、
結社シナリオで大活躍の高峰・勇さんと一緒に湯の町の道後温泉観光へ。
流石に朝から今治⇒しまなみ海道⇒道後温泉へと観光の合間を縫って移
動してるから、少し息が……え? その移動だと観光なんかしてたら時間
が全然足りないだろうって? いえ、移動時間は結構短いんですが……

まぁいいじゃないですか!

 細かいところは気にしちゃダメだよね、うん。僕は間に合いました。そして
みんなと修学旅行を楽しんだんです。うんうん。さあ続き続き!


 道後温泉は愛媛県松山市にある開湯三千年と言われる、この国最古の
温泉地。古くは日本書紀にも名前の載る、由緒正しい温泉で、道後温泉
本館は重要文化財指定。日本のカイゼル、あ、皇室って言わないとだね。
皇室専用の浴場のある温泉宿なんだって。すごい温泉宿なんだなぁ…。
でも本館は僕たちが今夜泊まるので、後回し。修学旅行のしおりでは、道
後温泉を絶賛した、独逸人の僕でも知ってる有名な小説家、夏目漱石に
ついて書かれていたけど、実はこの松山市、俳人正岡子規の出身地でも
あって、松山市立子規記念博物館があったりするんだ。今日のスケジュー
ルを決めてくれた益島さんが調べてくれたんだ。知らなかったなあ…

 あ、ちなみにベルリンには森鴎外記念館があるんだよ?


 子規記念館に行く前に沙希さんと涼介とは一度別れて別行動。ちょっと
した計画があるんだよね、ふふ。記念館の前で待ち合わせていた益島さ
んと勇さん。何とか時間通りに来れたみたい。勇さんは……ああ、ちょお
しょんぼりしてる……うん、そうだよね。勇さん、正岡子規はあんまり興味
なさそうだもんね……温泉行きたいって言ってたもんね……でも、待って
て勇さん。僕らがすぐに挽回してみせるから……!


 沙希さんと涼介は軽く準備があるから、と言って、二人と一緒に先に子
規記念館へ。中には正岡子規の写真なんかも飾ってあって……益島さん
が、そこで何故か吹き出した。なんでだろ? と思ったら、「イセスさんが
坊主頭を想像してしまいまして~」って、えええ何言ってるの!? 何言
ってるの!? そ、そりゃあ、長いから夏は蒸れて大変だし、冬は冬で冷
いポニーテールがうなじにぴたってなると「ひゃっ」とか声が出ちゃうけど、
それでも丸坊主はいやぁー!? って思いを込めて頭を押さえたら、横で
勇さんが大笑い。うう、笑わなくてもいいじゃない、いいじゃない……


 でも、大笑いして雰囲気が変わったのか、勇さんも記念館を楽しみだし
てくれた。益島さんが言うには、正岡子規は熱心な野球選手だったんだ
って。野球の話題に勇さんも身を乗り出して聞き入ってたっけ。「捕手」
「四球」の字を考えたのも、正岡子規が最初なんだって。益島さんは物
知りだなぁ…って、二人で感心してました。


 子規記念館を堪能したら、記念館を出て、打ち合わせ通りにすぐに目
配せ。浴衣を着た二人の女の子が出てきて、益島さんと一緒に全員で
「お誕生日おめでとう、勇さん!」 そう、今日、6月26日は勇さんの誕
生日。温泉に行けなくて落ち込んでた勇さんの為に計画していた、サ
プライズなお祝いが今日の計画のメインなんだ。驚く勇さんの顔に、や
ったね、と沙希さんとハイタッチ。沙希さんの連れてきた浴衣美人は、
実は涼介なんだけど、それはまだないしょ。女の子二人の……女の子
か……うん……女の子二人って書いていいのかな……うん、いいかな
…いいよね…? えっと、女の子二人の浴衣艶姿に相好を崩す勇さん。
沙希さんは髪を下ろして、いつもと少し違った雰囲気。艶っぽく笑う沙希
さんの「どう?浴衣美人…って程じゃないけどどうかな?」っていう台詞
に、「それなら堂々と美人って名乗れると思うぞ。先輩に見せればイチ
コロだぜ」、とサムズアップする勇さん。あはは、沙希さん、また照れて
真っ赤になってたな。もう一人の涼介は、「ふう、やっぱりこの時期湯
上りは少々暑う御座います」、と胸元や太ももをちらりうん涼介帰って
おいで? 頑張りすぎだからね?



 ん、でも喜んでもらえてよかった♪僕からは誕生日のプレゼントに野
球の観戦チケットを渡したんだけど……へ、ヘッドロックが……「ペアチ
ケットじゃないところが空気読めてるじゃねぇか」と言いつつ、漢泣きす
る勇さん。よ、喜んでくれてるんだろうけど…ご、ごめんなさい……今度
は眉間から脳がはみ出るかと思いました…


 益島さんのプレゼントは帰ってからのお楽しみ、とのことなので、四人
でそのまま、軽い夕食へ。大正時代の女給さんの格好をした人が出迎
えてくれるカフェに行ったんだけど、勇さん、喜んでくれてたな。沙希さん
と涼介が隣に居たからかも? ……でもその後、涼介が正体をバラした
時の勇さんの、あのなんとも言えない顔……笑っちゃいけないと思いつ
つも笑っちゃった。でも、それも含めて、勇さん、楽しそうだった。すごく
ニコニコしてて、最後に「ありがとう」って言ってくれたんだ。僕たちも笑顔
で、どういたしまして♪


 勇さんのお誕生日会が終わったら、道後温泉本館へ。由緒正しい旅館
の絶品の夕飯に舌鼓を打って…さ、最終日だもん、って思って耐えた温
泉を経て……だ、誰かデジカメで撮影してた気がするけど気のせいだよね
……! ……最後に待つのは、修学旅行名物枕投げ! これがなきゃ、
修学旅行とは言えないよね! これこそ修学旅行の醍醐味だよねっ!
僕はソフトボールチーム、「鹿苑寺しらたま堂」としてクラスメイトのみんな
と参戦。さー、頑張るぞー!



いつの間にか寝てましたごめんなさい



 うう……だってお布団で枕をやり過ごそうとしたらいつの間にか…! こ
うして僕の枕なげは心地いい夢の中で終わりを告げたのでした……くすん。
ちなみに優勝したのは沙希さんとサイトさんが混ざってたんだって。二人と
も、おめでとう!! ……今度は僕も優勝を狙ってみたいなぁ…

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イセスの修学旅行日記 3日目 その3

 海の駅での美味しいお昼ご飯と、楽しい思い出…楽しいよね、うん。みんな
すっごく笑顔だったし。うん、楽しかった。楽しかったんだ! ……うん、ホント
は笑われるのだって楽しかった。大きな口をあけて笑う鳥守道さんと、静かに
微笑みを作るネーヴェさんが対照的だったな。鳥守道さんは少ししか話したこ
とはないけれど、望美さんよりもさらに元気でパワフルな人のイメージ。彼氏さ
んが出来たんだって聞いて、うれしかったな。ネーヴェさんは逆に、僕たちの
中で群を抜いて大人っぽい方。微笑む仕草は静かで、それで居て強い印象の
残る方だ。……ホントは「閣下」をつけてお呼びしたいんだけど、ダメだって…


学園の貴種の方は、何故か「閣下」と呼ばせてくれないんだよね…今回一緒
のヴァリウス閣下も、面と向ってだと「ダメ」って言うし。理と掟を外れた貴種を
狩る、断罪者の血統だから、ご謙遜なさる事ないのに……凛々花さんも、最
初、「八重咲閣下」ってお呼びしたらすごくビックリしてたっけ。そんなに変なの
かなぁ…? エルフィンストーン閣下ですら、あ、いけない、話がズレた。


そんなみんなとの楽しい思い出でおなかをいっぱいにしたら、ふたたびサイク
リングに出発。目指すは亀老山展望公園。傾斜のついた坂道だって、みんな
とならへっちゃら。言葉を交わしながら、励ましながら登れば、いつの間にか、
展望公園についていたくらいだから。坂を登りきった僕たちの前に広がったの
は、見渡す限りの、空と、海。真っ青なパノラマ景色に、誰もが言葉を失って
た。もうすぐ訪れる夕暮れの匂い、夏の気配。遠くには僕たちの戦った街と守
った街。僕たちの後に公園にたどり着いた人たちのはしゃいだ声で我に返る
まで、僕たちは、言葉にも、写真にも、絵にも残せない「景色」を、ずっと、ずっ
と、心に焼きつけ続けていた。


 何だか少し気恥ずかしさを交えた雰囲気のみんな。とりあえず、気を取り直
す意味も兼ねて、塩アイスを食べようってことになって。みんなで塩アイスを食
べに。塩とアイスの取り合わせ、ってさっぱりイメージがつかなかったけれど、
一口食べてみると、不思議だけど納得の味。甘さと塩味の、なんとも言えな
いハーモニー。味についてまたみんなと話しながらたどり着くのは、展望台の
手すりに到着。そこにはたくさんの南京錠がかけてあった。この展望台の手す
りに愛を誓い合いながら、南京錠をかけると2人の愛は永遠になる、っていう
噂があるんだって。女の子の比率の多い、旧F組一同。そんな場所に行けば
南京錠のことが話題にならないはずないよね。

 「南京錠かぁ。汐音ちゃんは言わずもがなよね」

 そんな台詞で口火を切ったのは望美さん。途端に、珍しく真っ赤になる汐音
さん。ふふ、不意打ちだったのかな。うろたえて、もごもごと口の中で言葉をに
ごしてる。でも真っ赤になってくれて嬉しいな。ここまで照れてる汐音さん、めっ
たに見れないんだもん。このメンバーのおかげ、かな? こっそり事前に準備し
ておいた南京錠を後ろ手に隠しながら、そっと、汐音さんに囁く。いつも、いつ
も言っている言葉。もう何百回、何千回って伝えた言葉。

「大好きだよ、汐音さん」

 いつもなら、「フン」と少しだけ顔を赤らめて、そっぽを向くだけの汐音さんが
今日は、「勝手にやってろ」、と、すこしドモりながら、そっぽを向く。あまりに
も可愛くて、愛しくて、抱き締めたくなって。でも、流石にそこまではガマン。
隠していた南京錠を、すばやく手すりにカシャリ。ますます照れた汐音さんに
みんな、笑ってた。……みんなを、ぐるりと見渡した時、目に入った光景。塩
アイスを少し乱暴に口の中に押し込んで、呑み込んで。僕の視線に気づいて
淡く、ほろ苦く笑って、視線を逸らした凛々花さんの横顔


  (何かを書いて、そして消した痕がある)


 その時、涼介が「南京錠をみんなで一緒につけよう」、と言って、サイトさん
が即座に同意した。みんな、意見に賛成。南京錠をつけるようになった。僕
も凛々花さんも、何事もなかったかのように、同意して参加する。心の中で
涼介やサイトさんに、感謝。でも、サイトさんとも不思議な縁だな。今でも涼
介のベスプレで会うサイトさんは、やっぱり涼介のベスプレで出会って仲よ
くなった。僕のベスプレにもたまに顔を出してくれて、イメージは「神出鬼没
な人」っていうイメージ。皆で南京錠をつける段階になって、ハッと我に返る
涼介が照れる。そんなに、照れることかな…?「自分で赤くなるな! こっ
ちのが恥ずかしいでしょっ」って鳥守道さんが言ってたけど、うん、その通り
だよね。

「一部の方はもっと他にやるべき相手がいるのではないかね?」

 楽しそうにつぶやいたネーヴェさんの言葉に、まず涼介が鏡華ちゃんの
ことで沙希さんにからかわれる。余計赤くなる涼介。そんな沙希さんに僕
が不意打ち。「じゃあ沙希さんは氷蜜先輩とだね」なんて言えば、今度は
沙希さんが真っ赤になる。みんなで、いつしか訪れていた夕焼けの中で
笑いながら、カチリ。南京錠に、永遠の友情と親愛を誓って。


 南京錠をかけて気も取り直したら、その前で記念撮影。カメラマンになろ
うとする汐音さんと僕や涼介で止めて、カメラを若葉さんにお願いする。写
真が苦手、って言ってた天峯さんも、端っこに並んでくれた。銀色の髪をし
た物静かな天峯さんは、これでけっこうお茶目さん。でも、写真は苦手、と
言った時の苦笑は、怜悧な容貌のままの、整った苦笑だったな。若葉さ
んに汐音さんがカメラのレクチャーを終えると、みんなでそろって、一枚。
死と隣り合わせの青春の中で出会った、僕のかけがえのない友達たち
と、そろって、思い出の写真を一枚。空は、燃える様な、夕焼けだった。


 ……うん、別れた時のことは、あんまり書きたくないな。また、少し涙ぐ
んじゃうから。言葉に出来ないくらいに楽しくて、面白くて。充実した、修
学旅行の、最高の思い出。

  汐音さん
  涼介
  凛々花さん
  沙希さん
  望美さん
  天峯さん
  サイトさん
  ネーヴェさん
  ヴァリウス閣下
  鳥守道さん


みんな、ありがとう。本当に、楽しかったよ。


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イセスの修学旅行日記 3日目 その2

 一緒にタオル美術館に行っていた汐音さんと急いで合流する先は、瀬戸
内しまなみ海道のサイクリングツアー。ここでは、旧辺見ヶ原キャンパスの
中学1年F組の皆とサイクリングをする予定。え? どうして去年、仁奈森
キャンパスだった僕が、別のクラスの集まりに顔を出しているのかって?


 それは何を隠そう、この旧辺見ヶ原キャンパスの中学1年F組のメンバー
には涼介、汐音さん、凛々花さんが含まれていて、ネーヴェさんや望美さん
とは一緒にダンスさんたち、ヤドリギ使いの人たちの住む場所を探しに行っ
た仲。サイトさんは今でもベスプレで会うし、天峯さんとはついこの間、友達
になったり。鳥守道さんやヴァリウス閣下はベスプレにも来てくれたし。クラ
スは別だけれど、みんな、とっても仲がよくて、去年、このクラスになれなく
て、どれだけ悔しい思いをしたか! 僕も汐音さんや涼介、凛々花さんと授
業受けたかったな。そんな思い入れのあるクラスが旧辺見ヶ原キャンパスの
中学1年F組。クラスが別々になっちゃう時のお別れ会に思わず隠れて参加
しちゃったくらいに、僕の大好きなクラス。また、みんなに会えるなんて。また
みんながそろうなんて。そう思うと合流前から、わくわくして仕方がなかった。
僕をたしなめる汐音さんの顔も、どこかわくわくとしていたのが、何だかおか
しかったな、ふふ。


 一緒にサイクリングにいく沙希さんも、僕と一緒で旧F組のメンバーじゃな
いけれど、涼介と汐音さんとすごく仲がいいんだもん。きっとすぐに溶け込
めるよね。待ち合わせ場所に行くと、もう皆は既に集合していた。久しぶり
にみる、なつかしい顔ぶれ。元気に手を振る望美さんは、以前会った時と同
じで、とっても元気そうだった。……ベスプレでも元気なのはとてもうれしい
けどたまにクリティカルなことを言うのはやめてね……うん……パワフルな
人だね、望美さんは……


 なつかしそうに談笑しているネーヴェさんやヴァリウス閣下、元気に笑って
いる鳥守道さんの姿を見て、顔をほころばせる汐音さん。嗚呼、やっぱり、汐
音さんは笑ってる顔が一番綺麗だな。僕もつられて微笑みながら、サイトさん
や天峯さんの話している輪の中へ。今日も「乙女のたしなみやぁ」と制服の下
にスパッツ装備、元気一杯の凛々花さんと話してる沙希さんはすっかり、馴
染んでました♪


 全員揃ったところで、しまなみ海道のサイクリングに出発!自転車で潮風
を全身に受けながら、みんなで色々なことを話したっけ。ソフトボール大会の
こと、中間テストのこと。修学旅行のこと。去年の思い出。お別れ会で僕が
こっそり隠れてたことも話題になった。あの時は水入らずを邪魔したくないか
ら隠れてた、って言ったんだけど、随分からかわれちゃった。みんな元気で
学園で過ごしてる、って聞けて、すごく安心した。汐音さんや涼介、凛々花
さんや沙希さんのことは同好会で判るけど、ネーヴェさんや鳥守道さんのこ
とは全然判らないもんね。話題が来月の学園祭のことになると、凛々花さん
が「ウチ、去年の学祭後に編入してきたから楽しみなんよねぇ」って目を細め
てた。そっか、来月には学園祭だったよね。僕も、転校したのは学園祭の後
だから、まだ銀誓館の学園祭って知らない。楽しみだなあ…♪


「変わってないな、皆」「うん、何だか嬉しいです」


 自転車を漕ぎながら交わされる、そんなサイトさんと涼介のやりとりに頷く
僕たち。本当に、みんな変わってない。って言っても、2ヶ月ぶりだけど、もう
ずいぶん、昔の事に思えるのは、それくらい、離れてる時間を長く感じる間柄
だったからかな。サイクリングをしながら、離れ行く今治の街並みを見つめる
天峯さん。少し縁があって、とっても仲良くなったこの人は、銀色の髪の怜悧
な容貌の美少年、なんだけど…話してみると意外におちゃめな人だった。主
にいじわるさん、な意味で。でも、いい人だよね。八橋贈ってくれたし。そんな
天峯さんが、そっと作った表情に、覚えがあった。ああ、僕もあんな顔をして、
今治の街を見つめてたんだな。平和と、僕たちみんなの変わらない元気さに、
みんなが表情をほころばせたときに、気持ちのいい潮風が吹いて、鳥守道さん
が一言、大きな声で「さいっこー!」、って叫んだ。ホント、文句のつけようもな
いくらいに、最高の気分♪


 話しながら自転車を漕いでいれば、あっという間に海の駅に到着。海の駅
って言うのはパーキングエリアみたいな休憩所で、海岸沿いにあるから海の
駅なんだって。海にちなんだ観光施設、休憩所、お土産売り場、市場、そし
て料理があって、僕たちの今日の昼食はそこでとることに。海老やほたて、
イカや色んな魚を炭焼バーベキューにしたのもおいしかったけど、一緒に出て
来た鯛めしが絶品だったなぁ。鯛の切り身と昆布を炊き込んだ炊き込みご飯
なんだけど、炊き込みご飯のだしと昆布、そし鯛の旨味が炊いている時にご
飯によ~く染み込んでいて、ほぐした切り身鯛と一緒に食べれば、熱々の鯛
の甘味と三種類のだしの塩味がほどよく混ざり合って、炊きたてご飯からじゅ
っと染み出して……ああ、書いてたらまた食べたくなっちゃった。あんまりに
おいしいからリアクションをとろうとしたら、眉間に走るほのかな痛みにやめて
おきました……木刀コワイ。今日は持ってないけど、何が飛んでくるか……


 眉間のトラウマをそっと胸にしまいつつお昼を食べていた筈なのに、何故
か…そう、何故かいつの間にか食卓に広まる「汐音さん木刀唐竹割り」事件
の話題。あれいつのまに……!昨日の僕のやりとりがみんなに知れ渡っ
てしまい、みんなに笑われてしまいました。うう、笑うことないじゃない、ない
じゃない……

 


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イセスの修学旅行日記 3日目 その1

 6月26日(金曜日)   天候:快晴

 修学旅行3日目。今日も絶好の修学旅行日和。ディスティニーサーガの
打ち合わせもうまく進んでいるみたいで一安心。今日の朝食は和食。焼き魚
の種類まではわからなかったけど、身に程よく脂が乗ってて美味しかったな。
お箸で綺麗に焼き魚の身を剥いてたら、驚かれたっけ。箸使いを練習しててよ
かった。……母さん、元気かな。


 3日目はとにかく予定が詰まっていて大変。すごいタイムスケジュールになっ
てるから、効率よく動かなきゃ。まずは最初に銀狼の騎士団の方と今治観光へ。
今治はタオルの名産地だった、って今回で初めて知ったんだよね。そんなことも
知らなかった僕だけど……平和な町並みを見てると感じる、重く、強い実感。僕
たちは、この町並みを、この景色を守ったんだ。


 僕をそんな気持ちにさせてくれたのは、一緒に行動していた銀狼騎士団のメン
バーにして沙希さんのクラスメイト。今治出身の呪言士、吉師さんのおかげかもし
れません。ぶっきらぼうに見えるけど、とっても気配り上手な吉師さん。銀狼の皆
さんと、いつも美術室の解説で「吉師さん可愛いよね」って大盛り上がりの、優し
い吉師さんとも、あの戦いに敗れていたら、運命の糸は結ばれてなかったんだ。
そう思ったら、急に、この何気ない観光がとても贅沢な運命の奇跡なんだ、って
感じられて、いつもより、余計に楽しくなっちゃった。


 吉師さんのエスコートで、僕たちはタオル美術館へ。吉師さんは地元だ、と言っ
て案内してくれたけど、地元なだけであんなにガイドさん顔負けの解説、って出来
るのかな? きっとかくれてガイドの練習を……吉師さん可愛いなぁ……タオル
美術館に行くグループはシュヴールさんのクラスメイトも加えた、かなりの大所帯。
何だか団体旅行って感じがして、人数の多さだけでも楽しかった。


 吉師さんの案内で回った美術館の展示タオルの種類の多さ。タオルの製造工
程に僕やクレイドルさん、ヴァンさんや汐音さんはただただ驚きっぱなし。タオル
一枚でも、こんなにも、と思うくらいの豊富な種類、複雑な工程を経てるんだな…
なんだかプチ社会見学の気分。クレイドルさん、カイル・クレイドルさんは銀狼騎士
団で少し前まで団長代行をされてたカイト先輩の弟さん。カイト先輩の行動に頭を
痛めてる姿を見ると、なんだか親近感が湧きます……姉さん自重してね……

 ヴァンさんは僕の今のクラスメイト。中学生とは思えない長身の持ち主で…ひ
そかに「あれくらい身長欲しいなぁ」って思ってたり。吉師さんがいっしょうけんめ
い僕たちのお土産タオルを探してくれてる姿に、「素敵な人ですよね」って言っ
たら、力強く同意が。やっぱりいいなぁ、吉師さ……あれなんの日記だっけ。

 
 ふと気がつけば自分のタオルを選んでない吉師さん。汐音さんが「自分の分は
どうしたんだ?」って聞けば、「俺の分はいい」。これはもう、皆して選んであげる
しかないよね、吉師さんに似合うタオルを! みんなでわいわいと吉師さんのタオ
ルを選んだ後は、記念撮影。交代で写真を撮っている時に、ふと気づけば…王仁
丸さんの、嬉しそうな笑顔。あまり、話さなくて、表情を変えない人の、心の底か
ら振り絞るような笑顔が、美術館での最後の、一番強い思い出。きっと、僕も、
この銀誓館の人と本当の意味で仲間になれたとき、あんな顔で、笑ってたんだろ
うな……そう思うと、胸が熱くなった。時間の関係で、タオル美術館はここまで。
焼き鳥は食べたかったけど、仕方ないよね。次は、皆とのサイクリングだもん。


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